いなほ随想

資格取得マニアの道を辿りし我が人生

滝沢公夫(30法)

◆第一政治経済学部から第一法学部への前代未聞の転部

私は、当初第一政経学部経済学科に入学しましたが、父と祖父が法曹人であったため、その遺志を継ぎたいという希望が強まり、2年生のとき思い切って第一法学部に転部したのでした。友人達からは、随分物好きだといわれ続けましたが、自分の意思を通したのでした。未だに、このような転部者は早稲田で私だけのようです。

◆難関の司法試験に挑戦

★法学部への転部後は、本格的に司法試験の勉強に取り組み、受験する仲間と情報交換をしたり、受験会に所属したり、たまには一杯飲んで気晴らしもしました。また、早朝から図書館に篭って、終日勉強に明け暮れることも多かったです。

司法試験の受験仲間と(左から2人目が筆者)

★当時、法学部の教授陣は東大に負けないほど強力でした。しかし、司法試験受験のための体勢は貧弱で、合格者は中大、東大に大きく水をあけられていました。私は4年生の時、初めて司法試験に挑戦しました。試験場は東大で、自信に満ちたような風貌の学生が多く居りましたが、負けないように頑張った積りでした。しかし、結果は不合格でした。

★その後、民法の中村宗雄教授から、大学院に進学して受験を続けるか、助手として将来教授を目指してはどうかとのアドバイスもあり、大学院に進む予定でいました。ところが運悪く父が重い病となり、とにかく就職して自活の道を目指すほかなくなり、試験は仕事を続けながら受けることにしました。

◆就職と過酷な試験勉強

★ところが、大変な就職難の年でもあり、既に殆どの企業は採用を終了しており、辛うじて政府関係機関である国民金融公庫(現、日本政策金融公庫)を受験し採用が決まりました。

★就職後も司法試験の勉強を続けていましたが、予想以上に仕事は忙しく、現在では禁止されている持ち帰り労働も多く、勉強の時間を得るのに大変苦労しました。妻の父と祖父も法曹人で、それこそ法曹一家ですので、なんとか勉強も頑張りましたが、頻繁な転勤が加わることで、残念ながらついに受験は断念せざるを得ませんでした。

◆経営コンサルタントの資格取得と活用

★そこで、司法試験が駄目なら他の資格を得ようと意を決していたとき、日本生産性本部の「経営コンサルタント養成講座」の募集がありました。早速受験したところ、運良く合格し、一年間職場の人事部付の資格で派遣されることになりました。

経営コンサルタント証明書

★この一年間は、生産管理・工程管理・品質管理・財務管理・労務管理等経営全般にわたる座学と実習に追われ、本当に充実した期間でした。受講者は金融機関の人が多く、素晴らしい人材と知り合いになることができました。長野や静岡の企業に一ヶ月づつ実地に入って、問題点の把握と改善案のアドバイス等も実施しました。これらの企業は発展を続け、現在一部上場企業になっているのは嬉しい限りです。

★また、職場に戻ってからは、顧客への経営アドバイスの必要性を唱え、社内の経済雑誌で論文を発表したり、チラシを配布したりして、次第に体制も整って参りました。今考えますと、その当時としてはかなり斬新的な進言をしたものだと思っております。

★その後、定年退職後再就職した美容院チェーン本部や化粧品メーカーでも、市場調査や販売促進策の推進、更に労務管理等で大変役に立ち、その後大きく成長したこれらの企業からは、現在も大変感謝されています。

◆社会保険労務士の資格取得と活用

★続いて、法律知識の活用と、職場の労務管理の必要性から、急速に知名度がアップしていた社会保険労務士の試験に挑戦しました。ある程度難関でしたが、幸い一度で合格できました。

社会保険労務士表彰状

★これは職場で役に立つとともに、定年後に再就職した建築設計事務所での各種労働保険・社会保険の手続き、労務管理等で大いに役に立ちました。退職後は自宅で事務所を開設し、永年表彰も受けました。ただ、現在は廃業しております。

◆行政書士の資格取得と活用

★次に目指したのは行政書士でした。この試験は法律問題に限られていて、比較的楽に合格できました。定年後、社会保険労務士を兼ねて自宅で事務所を開設し、法人設立業務や、相続関係業務を中心にとりくみました。ただ、昔のような代書業務は皆無でした。

行政書士試験合格証

★また、小平市役所の法務相談にも相談員として出向き、主に遺言・相続の相談を受けました。また、行政書士会多摩中央支部の副支部長と相談役を努め、各種会合の運営や会員の研修にも取り組んできました。ただ、これも現在廃業しております。

◆宅地建物取引主任者の資格取得と活用

★それから、法律関係資格として、宅地建物取引主任者の試験を受けました。これも一回で合格できました。定年退職後、大手不動産会社にも再就職しましたが、ここではこの資格は必須でした。厳しい仕事ながら、統括部長として大いに活動できました。

宅地建物取引主任者通知書

◆損害保険上級資格者の資格取得と活用

★最後に取得したのはこの資格です。定年退職後に再就職した建築設計事務所が、損害保険の代理店を開設することになり、必要に迫られて取得したのでした。これは通常の法律関係の資格と異なり、一寸戸惑いましたが、初級、普通と合格し、ついに上級も合格したのでした。ここでは、自動車、建築関係の保険を中心に大いに売りまくり、大変ながら楽しい仕事をしました。

損害保険上級資格者証明書

◆おわりに

★このように、私は司法試験の挫折をバネに、法律関係を中心とする各種資格に挑戦してきましたが、職場でも、再就職先でも、自営の事務所でも、これらの資格は大いに役立ってきました。今後も自己研鑽を怠らず、精神的にも充実した老後を送りたいと思います。(2013.2.14.記)


♪BGM:Erik Satie[Gymnopédies1]arranged by Pian♪

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