いなほ随想

特集

老鉄よもやま話
(鉄道趣味と私)

遠藤雅司(
31法)


遠藤雅司さんは、早稲田大学卒業後、大学図書館の職員として半世紀の長期間勤続、その間、学生時代から鉄道研究会に関わってきた筋金入りの“鉄ちゃん”です。「いなほ随想」に2回寄稿いただいたところで、長期連載の同意を得、「老鉄よもやま話」としてコーナーを独立させました。                    (ホームページ管理人敬白)



 第1集

   (連載第1回)


  「乗り鉄」

ドイツICE特急食堂車で
くつろぐ筆者(05年2月)


★昨年(2008年)喜寿を迎えた私ですが、本屋に入ると鉄道コーナーに自然と足が向く始末です。
08年5月には、長野県の大糸線沿線に3泊で写真撮影、7月には名鉄の名車パノラマカーの「さよなら運転」乗車のため、やはり3泊で、東京ー豊橋(泊)−名古屋(泊)ー諏訪(泊)ー東京と一回りして来ました。しかし、公判は、これらの無理が祟ったのか、腰痛で寝込み、実際に後期高齢者になったことを実感しました。

★一口に鉄道ファンと言っても、模型、実車、写真、旅行(乗り鉄)、きっぷ収集など多種多様です。これだけ幅広く奥の深い趣味は他にないかも知れません。

★10年前の2000年に「トレイング2000」ポイントキャンペーンがJR東日本より発表されました。このルールは、2年間にJR東日本72戦の全線区を踏破するとポイントが貯まり、記念品がもらえるというものです。会社の増収のためです。

★わたしは、それよりも早く、勝手にJR東日本だけでなく、JR全線区の踏破を終えていました。これには、全国をよく旅行していた私でも、5年かかりました。

★幹線はよく乗りますが、支線、盲腸線は、なかなか乗るチャンスがありません。それに乗るため時刻表を見て計画を立てます。乗る目的の線より、そこまで行く運賃の方が当然高いことになります。馬鹿げたことです。好きでないとできないことです。

★盲腸線にもいろいろあります。
 ◆列車の走るのが朝と夕方だけの線
  ☆山陽線の兵庫から出ている和田岬線。ドッグに勤める人の通勤列車です。
   新幹線で新大阪に行きホテルに泊まり、朝食前に乗りに出かけたことをいまもよく覚えています。

 ◆幹線なのに1日に5往復の列車しか走らない区間があります。
  ☆上越線の越後湯沢ー水上間。直江津から湯檜曽温泉に行くので、途中下車して2時間待たされた覚え  があります。お陰で駅にある「酒風呂」に入ることができて、いい思い出になりました。

★日本のJR線は走破したので、1994年からヨーロッパの鉄道に乗りに出掛けるようになりました。現在までに7回出かけました。ヨーロッパの鉄道にも、日本にない面白いサービスがあります。次の機会に書きたいと思います。
                                               (投稿:09.1.14.)

    
(連載第2回)


「青春18きっぷ」(その1)
★正月、春休み、夏休みの期間に年3回発売される「青春18きっぷ」は、最近JRが大きなポスターで宣伝しているので、知っている人や実際に利用した人も多いと思います。スタート時は学生向けに売る出した経緯から「青春18きっぷ」の名前がのこっていますが、年齢制限なしに誰でも使える“格安きっぷ”です。

★10年ほど前、JR全線踏破に挑戦していた私も「青春18きっぷ」をよく利用させてもらいました。JRの普通と快速列車が1日乗り放題で2,300円ですから格安です。ただ、1セットが5日分(11,500円)になっているので、無駄でも5日分購入しなければなりません。

★この「青春18きっぷ」は、1人で使い切っても、同行する仲間やグループで分けてもいいので、使い勝手のよさも魅力です。ただし、途中で特急に乗ると、特急券と運賃を取られますので注意して下さい。

★桃の満開の時期、武蔵小金井ー八王子ー交付ー身延ー沼津ー御殿場ー東京ー武蔵小金井と周り、車窓から日本一の桃源郷や桜、富士山を楽しんで来ました。四季の小海線の高原列車の旅も「青春18きっぷ」で満喫しました。このコースでは、甲府と小渕沢の美味しい駅弁も楽しみでした。

京都東山 兼六公園 北アルプス立山連峰

1日目 東京23:10(ムーンライトながら)→大垣6:55→同7:00→米原7:34→同7:35→京都着8:54(京都見物1泊)
2日目 京都6:22→敦賀9:50→同9:53→金沢12:25(金沢見物1泊)
3日目 金沢7:53→泊9:51→同10:31→直江津11:37→同11:54→長野13:29(長野見物)→同14:01→小渕沢
17:02→同17:34→甲府18:19→同18:29→高尾20:07

★写真は、私が「青春18きっぷ」を3枚使い、京都、金沢、信州を3日間旅してきたときのものです。
京都では1日使えるので東山まで足を延ばし、ゆっくり見学。金沢では兼六公園を訪れた後、金沢の「アメ横」と言われる近江町市場に出かけ、地産の甘エビを買い込み、ホテルで味覚を堪能しました。信州に向かう北陸線の車窓からは、北アルプスの立山連峰を眺めながら、金沢の有名な「お酒付き駅弁」を楽しみました。


★最近の列車は、ほとんど電車になりましたので、1日に日帰りできる距離がすごく伸びました。例えば東海道線では、東京駅7:24で出発して、名古屋13:57着。約3時間後の16:43発の電車に乗れば、東京駅22:43に帰れます。

★T日におよそ150kmほど乗れば元が取れる計算になります。東京ー小田原を往復すればOK、片道ならさらに遠くに行けます。遠くに行く例を調べてみますと、「青春18きっぷ」ファンなら誰でも承知の、東京発23:09の「ムーンライトながら」を上手く利用すると、九州の熊本まで行けます。ただし、日付変更直前の小田原まで別途購入(1,450円)する必要があります。でも、鉄道好きの“鉄ちゃん”は、これがまた楽しいのです。

★「青春18きっぷ」をご紹介しましたが、JRの割引きっぷはたくさん発売されています。時刻表に詳しく載っていますので、研究すると面白いと思います。

★列車の旅では、移り行く車窓を楽しみながら、ゆっくりと駅弁を食べられます。お酒を飲んでも咎められることもありません。各鉄道会社の観光列車などでは、指定された座席のほかにラウンジスペースが設けられています。座り疲れたら、そこで気分転換もできます。

★列車の旅を楽しんでいる他の客や、普通列車なら地元の人と一期一会の会話も楽しめます。列車の旅の魅力は、それだけではない。新幹線、普通列車、寝台列車、設備や雰囲気がそれぞれ違う。列車の旅に取りつかれる人が増えてきました。それに応えて、JRでは熟年夫婦向きに贅沢旅行ができるものや、反対に若者の向きの格安旅行のできる「青春18きっぷ」も用意しているわけです。70代、80代が「青春18きっぷ」で旅をするなんて、粋だと思いませんか。                 (投稿:09.1.27.)


(連載第3回)


「青春18きっぷ」(その2)

連載第3回の「青春18きっぷ」を読んで興味を持ち、利用したいと思われた方がおられるかも知れませんので、もう少し詳しく書かせていただきます。

★「青春18きっぷ」の発売時期と期間は、春、夏冬の年3回で下記の通りです。

発売期間 利用期間
2月20日〜3月31日 3月1日〜4月10日
7月1日〜8月31日 7月20日〜9月10日
12月1日〜1月10日 12月10日〜1月20日

★各シーズン公判の10日間は、きっぷの発売がないので「要注意」です。JRの主な駅、旅行センター、主な旅行会社で発売します。値段は、1回(日)乗り放題で2300円ですが、5回分が1セット1万5000円。1回(日)分の有効期間は、0時〜24時の「24時間」となっています。

★乗車できる列車は、全国のJR鉄道線の快速、普通列車の自由席のみ利用できます。別途で新幹線や特急券、グリーン券を購入しても乗車できません。JRバスも乗車不可です。当然、第三セクターの鉄道にも乗れませんが、中には「青春18きっぷ」の旅を応援するようなアイテムを用意している会社もあるのでチェックをお忘れなく。
 

★快速・普通列車のグリーン車の自由席には、グリーン券を購入していれば乗車できます。ただし、指定席ばかりの快速にはのれません。それから夜行列車の裏ワザをよく研究すれば、もっとおトクな旅が楽しめます。「青春18きっぷ」の基本が分かりましたら、一度ぜひ挑戦してみて下さい。
                                                   (投稿09.2.20.)
(連載第4回)


「温泉、雪景が楽しめる日帰りコース」

今回は、私が何年か前に出かけた雪景色、温泉、渓谷美を満喫した日帰りコースを書いてみます。


★上越国境の雪景色と温泉を楽しむと同時に上越線のループ線を体験できる日帰り列車旅です。小平市在住者には、新宿駅10:12分発の高崎行きの快速電車を利用するのが便利です。高崎駅から電車が少なくなるので注意して下さい。高崎12:15分発の上越線の普通電車で越後湯沢に向かいます。

★ここから国境を越える電車は極端に少なくなります。1日5往復しかないことを忘れずに。上越国境の雪景色や美しい山並みを車窓から眺め、駅弁を賞味しながら長いトンネルを抜ければ、越後湯沢駅に到着します。駅の構内には、新潟の地酒や温泉を楽しめる施設「ぼんしゅ館」があり、のんびりと過ごせます。酒風呂は、お酒の好きな人にはたまらない施設です。湯上りの後、体からなかなか酒の匂いが取れず困った記憶があります。

★帰りは、八海山の地酒やお土産を購入、17:55分の上り電車に乗り、湯檜曽駅でループ線を体験して、水上駅18:36分の電車に乗り継ぎ、高崎で上野行きに乗り換えれば、21:43分に上野駅到着。充実した1日でした。

往き 新宿10:12−高崎11:56・12:15−水上13:17・13:44−越後湯沢14:22
帰り 越後湯沢17:55−水上18:33・18:35−高崎19:38・20:00−上野21:43

 (投稿09.2.20.)

(連載第5回)
「東京で利用できる得々フリーきっぷ」

★格安きっぷ「青春18きっぷ」について2回に渡って書きましたが、旅行の再の基本である「きっぷ」に関連して、さらに紹介します。格安きっぷには、「青春18きっぷ」のほか、まだいろいろありますが、今回は、東京で利用で
きる「お得なフリーきっぷ」について書きます。

★これから紹介する「青春18きっぷ」よりかんたんに利用できる「1日フリーきっぷ」は大変便利ですので、一度試してみてください。

  


@
都営まるごときっぷ(東京都交通局) ¥700 有効日数1日 当日券・券売機・前売り券があり。

・地下鉄・都電・都バスなど交通機関が発達した東京では、1日乗車券は、さらに強い味方になります。観光だけでなく買い物や用足しの際にも、安上がりかつ動きを軽快にしてくれます。

・小平市内からは利用できませんが、青梅〜西武柳沢間の都バスに
「都営まるごときっぷ」が使えます青梅まで往復すれば普通乗車券より安くなります。

・都内の観光や用足しなどでは、都営地下鉄・都電が利用できるので便利です。日暮里の舎人(とねり)ライナーも利用できるので、体験されると面白いですよ。私は、これをよく使います。


路線図は、月刊誌『ノジュール』(09.3月号 JTBパブリッシング)の特集「おトクなフリーきっぷ」から転載。

 
A東京メトロ一日乗車券(東京地下鉄) ¥710 有効日数1日 当日券・券売機・前売り券あり。

・東京メトロ各線の全線、初乗り5回でお得。都内観光・用足しに便利。


B都区内パス(JR東日本) ¥730 有効日数1日 主なJR駅のみどりの窓口 当日購入可。

・23区内のJR線乗り放題。これも都内観光・用足しに便利。


Cホリデー・パス(JR東日本) ¥2300 有効日数1日 主なJR駅のみどりの窓口 当日購入可
 通用時期:土日および4/29−5/5、7/20−8/31、12/29−1/3


・首都圏のJR線乗り歩きに最適。


D小江戸川越クーポン(東武鉄道) 池袋より¥1020 有効日数1日 東武鉄道の主な出発駅で発売

・小江戸名所バスも乗り放題 川越エリアの割引券付き

 
E江の島・鎌倉フリーパス(小田急) ¥1430  有効日数1日

・江の島・鎌倉の散策におすすめ


F鎌倉・江ノ島フリーきっぷ(JR東日本)山手線発着 ¥1970 有効日数2日

・一泊に最適のJRフリーきっぷ


G横浜1DAYきっぷ(京浜急行・横浜高速)品川発 ¥1090 有効日数1日

・鉄道が京浜急行・横浜市営地下鉄・横浜高速(みなとみらい線)3路線が使える「お得きっぷ」


Hみなとみらいチケット(東急・横浜高速) ¥840 有効日数1日

・東京急行東横線の渋谷駅からみなとみらい線直通の「お得きっぷ」

(投稿09.3.10.)

(連載第6回)

「高速バス事情」

★JRグループでは、09年3月14日のダイヤ改正で、東京から九州に行く最後の寝台列車(ブルートレイン)「富士」「はやぶさ」を廃止しました。13日の上りと14日の下り列車の状況がテレビに放映されましたので、皆さんもご覧になったかと思います。私のような鉄道趣味の者や寝台を懐かしむ人で、寝台県は数分で売り切れたようです。

★昔は、東京から西の方に行くブルートレインは、1日10本はあったはずです。新幹線・飛行機・バスにお客を取られ、利用する人が少なくなったのが原因です。早く目的地に往きたい人は飛行機か新幹線、安く行きたい人はバスを利用するようになり、「富士」「はやぶさ」だけが残っていました。

東京からの寝台特急は、札幌行きの「北斗星」と「カシオペア」(偶数日運転)だけの2本になりました。特に「カシオペア」は、全車両が2階建て1等個室寝台という豪華な編成です。それこそ「走るホテル」です。

★日本は、すでに贅沢な観光旅行は、デラックスな個室寝台列車を利用し、ビジネスの利用は新幹線か飛行機、安く上げるにはバス利用が定着してきたと言えます。ドイツやフランスなどヨーロッパの国々でも四感染の路線が増えるとともに寝台列車の運行本数が少なくなりました。

★数年前、ドイツでミュンヘン〜ベルリン間とハンブルク〜チューリヒ間に乗りましたが、シャワー・トイレ付きの豪華な個室寝台でした。普通車両も連結されていましたが、ガラガラでした。日本と需要傾向が同じですね。

★「富士」「ハヤブサ」のニュースが新聞に載った2日後、「JR高速バスが東名高速道路で全焼」の記事を皆さんご覧になったと思います。実は今回、寝台列車を駆逐した高速バスのことを書こうと思っていたので驚きました。


「進化する高速バス」

★安く・早く・快適な便利な移動手段として発達している高速バスは、九州方面行きの寝台列車を全て駆逐したのは前述の通りですが、大都市間や地方都市への移動手段として、路線網が増え続けています。

★最近、マスコミなどで「高速バス」という場合、本来の「高速バス」と最近台頭してきた「ツアーバス」を含みます。「ツアーバス」といっても一見路線バスと見分けがつきません。ツアーバスは、当初は路線バスより安い料金を設定して、ほぼ100%をインターネットで販売、集客する特徴がありました。

★それが最近では、いろいろなスタイルの「ツアーバス」が現れ、高級志向のものまで登場してきました。路線高速バスに比べて、繁忙期と閑散期など季節や曜日によって価格をきめ細かく設定しています。とは言え、ツアーバスはやはり価格の安さで一定の地位を占めつつあります。安全管理上の基準、乗務員の管理などさまざまの条件をクリアして運行許可を得ている路線バスに比べてそれこそピンからキリまであることを知っておくことが必要です。

★ツアーバスの増加が契機となって、格安の高速バスも運行されるようになりました。夜行バスは、通常3列シート・トイレ付き(定員28名)の車両で運行されるのが普通ですが、4列シート(定員80名)車両を使い、4割ぐらい安い運賃設定にしたのが、JRバス関東の「青春メガドリーム号」なのです。先日、東名高速で全焼した車両です。ドイツ製の2階建て4列シート80人乗りの格安と超高級に2極化された最新式の約バスでした。

青春メガドリーム号の車両 青春メガドリーム号の2階4列シート
JTB月刊誌「ノジュール」(09年2月号)より JTB月刊誌「ノジュール」(09年2月号)より

★JRバス関東が運行するJRバスの東京〜大阪間の場合、通常3列シートの場合は、8610円のところ、4列シートは4300円〜5000円と安くなります。それに満席のときに限り発売する「超割引」の補助席は、2100円まで下がります。その一方、このドイツ製車両は、ハイグレードな左右1列のワイドな「プレミアムシート」が1階に3〜4席設定されています。まるでファーストクラスのような高級シートが人気で、入手しづらいきっぷです。このシートの運賃は、9910円です。

JTB月刊誌「ノジュール」(09年2月号)より

★これからは、格安と高級化に分化していく傾向にあるようです。格差社会の反映でしょうか。しかし、このドイツ製車両を使った「メガライナー」は、昨年(08年)5月にも同車種が名神高速で全焼していて、現在、国内には3台しかありません。所有しているJRばす関東のJRバスでは、当面検査のため運行を中止するとしています。当分、東京〜大阪間のJR夜行バスでは、快適なプレミアムシートは、利用できなくなったわけです。

★JRバス関東のバスは使えなくても、他にも自慢のプレミアムシート車両を運行している会社があります。東京ディズニーランド〜大阪間をウィラー・エキスプレス社が運行している「ウィラー・エキスプレス」(050−5536¥4767)とJR西日本の「どりーむ高松・松山号」(087−825−1657)です。

JTB月刊誌「ノジュール」(09年2月号)より JTB月刊誌「ノジュール」(09年2月号)より
JTB月刊誌「ノジュール」(09年2月号)より

連載第7回からは第2集に登載。右のアイコンをクリックするとご覧になれます。第 2 集

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