いなほ随想
特  集

仏塔巡り歩る記


滝沢公夫{30法)

<第6集>

連載第35回


★今回から滋賀県に入るが、ここには素晴らしい仏塔が多く存在する。

[滋賀県編]

◆極彩色仏画のある仏塔[西明寺・三重塔(国宝)](滋賀県犬上郡甲良町池寺)

★近江鉄道尼子駅からバスで行くが、かなり不便な場所だ。石段の長い参道を行くと二天門があり、広大な境内に入ると右手に西明寺の三重塔が屹立している。あでやかで、軒の反りがやや強く、高さ20メートル余り、素晴らしいものだ。相輪の一部が欠けているが、保存状況は良い方だ。

丘の上から西明寺・三重塔を望む 三重塔(国宝)

★仏塔は鎌倉時代の建立で、国宝になっている。特色があるのは、仏塔内に各種の仏画が極彩色で描かれている点だ。本当に珍しい例で、また大変素晴らしい。

★西明寺は平安時代の開基で、以降盛衰があり、火災もあったが、主要な建造物は罹災を免れている。本堂は国宝であり、二天門や仏像多数も重文になっている。この寺は、金剛輪寺、百済寺と併せて「湖東三山」と言われており、巡り歩くのは誠にに楽しい。特に紅葉や新緑の季節がお勧めだ。観光バスによる観光客は常に多く、それだけ素晴らしさを持つ寺だと思う。



◆湖東三山のひとつ[金剛輪寺・三重塔(国指定重文)](滋賀県愛知郡秦荘町松尾寺874)

★近江鉄道豊郷駅からバスで行くが、ここも大変不便なところだ。参道を登りつめて仁王門を入ると、本堂の左手奥に金剛輪寺の三重塔か゜鎮座している。美しく整った仏塔だ。鎌倉時代の建立で、国指定重文になっている。高さ20メートル余り、最近の大掛かりな修理により、美しく蘇ったものという。

金剛輪寺・三重塔

★金剛輪寺は奈良時代の開基で、由緒深いものであるが、信長により火を放たれ、その後徳川氏が復興したものだ。古い堂塔は火災を免れている。本堂は国宝であり、その他重文も数多く存在する。

★この寺も、「湖東三山」のひとつとして、巡り歩く人は多い。情趣深い土地柄とともに、一日たっぷりと過ごしたいところだ。


◆西寺と呼ばれる国宝塔[常楽寺・三重塔(国宝)](滋賀県甲賀郡石部町西寺574)

★草津線の石部駅から1時間ばかり歩くことになり、かなり不便だ。仁王門から入り、季節の花々が咲き乱れる参道を行くと、常楽寺本堂の左側の高い場所に、三重塔が高々と建っている。

常楽寺・三重塔

★高さ23メートルほど、均整の取れた堂々たるものだ。室町時代の建立で、国宝に指定されている。内部には、彩色文様が描かれていて素晴らしい。

★常楽寺は奈良時代の開基で、一般的にこの寺を「西寺」と呼び、近くにある長寿寺を「東寺」と呼んでいて、道案内の看板等にもそのように書かれている。人里離れたこの地で、脈々と信仰が息づき、本堂と三重塔が国宝になっている等、文化財と自然に恵まれた貴重な寺だ。


◆信長が移築建立[ハ見寺・三重塔(国指定重文)](滋賀県蒲生郡安土町下豊浦6367)

★安土駅から徒歩30分ばかり、苔むした乱積みの石段を登ると、豪壮な仁王門に達する。さらに上っていくと、右側に本堂跡があり、その下の狭い場所にハ見寺・三重塔がひっそりと建っている。

ハ見寺・本堂跡

★やや間延びのした形で、なんとも古めかしく、寂しい感じだ。相輪は立派。室町時代の建立だが、信長が、前記の長寿寺から移築したものという。国指定重文となっている。

ハ見寺・三重塔

★ハ見寺は、信長が安土城を建立した時、一部を割いて開基したもので、当時は堂塔が建ち並び壮観であったが、江戸末期に仏塔と門を除いて焼失したという。仏塔の奥には広大な安土城跡があり、遠く信長の時代を思い起こしてくれる。しばらく感慨に耽りながら下山した。


◆808の石段の寺[長命寺・三重塔(国指定重文)](滋賀県近江八幡市長命寺町157)

★近江八幡駅からバスで30分ばかり、登り口に着く。ここから、急で曲がりくねった808の石段を登る。喘ぎながら、休みながら、なんとか頂上に着く。

長命寺の長い石段

★頂上は驚くほど広大で、各種の堂塔が散在していて壮観だ。山の上の仏都という感じ。長命寺・三重塔は、一番奥の一段高いところに屹立している。高さ25メートルほど、屋根の逓減は自然で、全体に良く均整がとれていて素晴らしい。くすんだ朱色の本体も好ましい。桃山時代の再建で、国指定重文となっている。昭和30年代に解体修理が行われたとのことだ。

長命寺・三重塔

★長命寺は聖徳太子の開基と伝えられ、その後盛衰が繰り返されたが、現在、西国33観音霊場の31番札所として、多くの信者を集めている。また、本堂、千手観音菩薩像等、重文も数多く保有する。

★寺を後にして長い石段を降る時には、次々と登ってくる巡礼者に声を掛けながら、素晴らしい仏塔や寺域を拝観できたという満ち足りた思いで一杯であった。



連載第36回

[滋賀県編]続き


◆三井の晩鐘で有名[三井寺(園城寺)・三重塔(国指定重文)](大津市園城寺町246)

★京阪電車三井寺駅で下車し、10分程度のところにある。仁王門から境内に入ると、誠に広大で木立も多く、とても清々しい。堂塔伽藍が甍を連ね、大変に巨大な寺院だ。近江八景のひとつ「三井の晩鐘」は有名で、入ってすぐのところにある。

★三井寺・三重塔はかなり奥の小高い丘にあり、高さ25メートルほど、本瓦葺きで、大変堂々としている。いかにも重厚な感じで圧倒される。南北朝時代の建立で、家康により江戸初期に移築されたものという。国指定重文となっており、その名に恥じないものだ。

★寺は奈良時代の開基で、天智・天武・持統の三帝が産湯に用いた霊泉があることから、寺の名がついたそうだ。いずれにしても、大変な歴史を有する寺で、西国33観音霊場の14番札所になっていて、多くの信者が訪れ、活気がある。また、金堂をはじめとして多くの国宝、重文を保有し、実に貴重な寺院だ。

三井寺・納経帳の写し

★広大な境内には見所が多く、ゆっくりと一日過ごしたい。なお、ここの仏塔の写真を紛失してしまい、納経帖の写しでご勘弁願いたい。


◆源氏物語執筆の場所[石山寺・多宝塔(国宝)](大津市石山寺1−1−1)

★京阪電車石山寺駅から10分程度のところ、瀬田川の景勝地にある。山門を入ると一面に岩石が覆い、その中に堂宇が建ち並んで、独特の雰囲気を醸し出している。

★右側の石段を登り、本堂の脇を過ぎると、一番高い場所に石山寺・多宝塔が鎮座している。実に均整の取れた姿で、堂々たるものだ。高さは17メートルほど、かつて切手の意匠にも取り入れられたこともある名塔で、我国最古の仏塔のひとつでもある。鎌倉時代の建立で、国宝に指定されているだけのことはある。

石山寺・多宝塔

★石山寺は、奈良時代の開基で、一時信長の焼き討ちがあったが、各時代の権力者の手厚い保護で発展し、西国33観音霊場13番札所として、信者や観光客の参詣はひっきりなしだ。境内には各季節とも花々が絶えないが、特に紅葉の季節は最高で、近江八景のひとつ「石山の月」としても名高い。

★また本堂には、紫式部が「源氏物語」を書いた場所と言われる「源氏の間」があり、この本堂も国宝になっている。その他、境内には国宝や重文の建築物、石造文化財、仏像、文書等が多数あり、その点でも貴重な寺院だ。

★兎に角、仏塔を中心にして見所が多い寺院であり、歴史を偲び風物を眺めながら、ゆっくりと一日を過ごしたい。

以上で滋賀県を終わるが、紹介できなかったものを一覧にしておきたい。


[滋賀県の仏塔一覧](既に取り上げたものを除く
<五重塔・三重塔・二重塔・多宝塔>

   寺    名       所   在   地   
1.佐和山遊園・五重塔     彦根市古沢町1156
2.観音正寺・三重塔       蒲生郡安土町石寺2
3.宝厳寺・三重塔       東浅井郡びわ町早崎1664
4.徳源院・三重塔       坂田郡山東町清滝288
5.延暦寺・二重塔、多宝塔   大津市坂本本町4220
6.邇々杵神社・多宝塔     高島郡朽木村宮前坊



連載第37回


★今回から大阪府に入る。ここは、私が現職当時比較的長く勤務したところであり、毎月のように京都や奈良の古寺に出かけていたので、大変印象深いものがある。一生懸命関西弁を覚えたのも、懐かしい思い出だ。

[大阪府編]

◆聖徳太子開基の最古の寺[四天王寺・五重塔](大阪市天王寺区四天王寺1−11−18)

★天王寺駅から地下鉄で一駅だが、歩いても15分程度だ。私の現職時代の家も近かったので、懐かしく、親しみ易いところと言える。

★仁王門から入ると、境内は頗る広大で、全域が史跡に指定されている。仁王門・仏塔・金堂・講堂が縦一直線に並んでおり、所謂四天王寺方式だ。

★四天王寺の五重塔は、繰り返された兵火や火災によってその都度再建され、現在のものは昭和34年に建立されたばかりだ。8代目のものという。鉄筋コンクリート造りであるのが残念だが、全体的に形は良く、軒の反りはないが上に向かって適当な逓減がある。

四天王寺・五重塔

★四天王寺は、飛鳥時代に聖徳太子が建立した日本最古の官寺で、度重なる火災にも拘わらす゛復興を重ね、現在も創建当時の荘厳さと風情を保っている。素晴らしいことだ。

★境内には、国宝や重文の建築物、仏像、縁起等が保存されているが、良く残っているものだ。大都会の真ん中にありながら、喧騒から逃れ、独特の聖域を形成していることに大きな感動を覚える。ここは新西国観音霊場第1番札所になっていて、信者の参詣は後を絶たない。

★なお、余計なことではあるが、大阪に行けば必ず寄るところがあった。道頓堀の「くいだおれ」だ。ここの居酒屋部門のチーフマスターと親しくなり、酌み交わす仲であったが、昨年廃業となり、大変寂しい思いをしている。


◆聖武天皇の勅願所[水間寺・三重塔](貝塚市水間638)

★南海電車貝塚駅で水間鉄道に乗り換え、水間駅下車20分ばかりのところにある。水間駅の駅舎は仏塔の形をしており、演出効果抜群だ。

★厄除け橋を渡ると広大な境内に入る。堂宇が散在しているが、水間寺の三重塔は中心の最も目立つところに屹立している。高さ20メートルほど、形は均整がとれていて好ましい。本体の軒下四面に、十二支の動物の彫刻があり、大きな特徴となっている。仏塔は、江戸時代後期に再建されたものという。

水間寺・三重塔
三重塔の初層軒裏の彩色彫刻

★水間寺は、奈良時代に、聖武天皇の勅命で行基菩薩が開基したもので、時代の変遷で盛衰を繰り返してきたものと言う。江戸時代後期には、本堂等堂宇が再建され、現在は新西国観音霊場の第4番札所になっている。

★住職として今東光が居たこともあるが、現在の住職も大変気さくで、種々説明もしてくれた。大阪では最も古い仏塔だ、と胸を張って見せたのが印象的だ。実際、本堂の厄除け観音詣での人々をはじめ、多くの信者や観光客で活気のある寺であった。


◆聖徳太子ゆかりの寺[叡福寺・多宝塔(国指定重文)](南河内郡太子町太子2146)

★近鉄上ノ太子駅または喜志駅からバスに乗車し、太子前で下車する。現在は少し不便な地だが、上代においては、難波と飛鳥を結ぶ主要道路であった竹内街道に面し、この地域の中心地であった。

★南大門を入ると、広大な境内には多数の堂宇が建ち並び、大変壮観だ。庭園も素晴らしい。叡福寺の多宝塔は、入って左側にどっしりと鎮座している。均整が良く取れていて、安定感があり、黒々として歴史も感じられる。江戸時代初期に再建されたもので、国指定重文になっている。高さは15メートル足らずか。

叡福寺・多宝塔

★叡福寺は、聖徳太子が妃と合葬された際、推古天皇から寺域を賜ったもので、以降、皇室や高僧の帰依すること深く、一大伽藍となったもののようだ。境内の一番高い場所に、聖徳太子磯長陵があり、厳粛な雰囲気を持っている。

聖徳太子磯長陵

★ここは「上の太子」とも呼ばれるが、八尾市の「下の太子」、羽曳野市の「中の太子」と併せて、何れも聖徳太子ゆかりの地だ。近くには、二上山頂に大津皇子の墓があるほか、小野妹子、さらには天皇の墓所等があり、上代の歴史を偲ぶ絶好の場所になっている。大阪と奈良の境界にあるこの地は、是非一日ゆっくりと巡り歩きたいものだ。 


連載第38回

[大阪府編]続き

◆景勝・箕面の滝に近い[勝尾寺・多宝塔](箕面市粟生間谷2914)

★阪急千里線北千里駅、または地下鉄千里中央駅からバスで行くが、阪急箕面線箕面駅からタクシーを利用するのが最も便利だ。箕面の滝の素晴らしい景色を見下ろしながら、どんどん高度を上げていくと、多くの野猿が、車の周囲や屋根まで登ってくるという微笑ましい光景になる。

★やがて極彩色の仁王門に着く。境内に入ると、山寺には似合わないように明るく開け、しかも広大だ。数多くの堂宇が散在している中で、勝尾寺の多宝塔は最も高い位置に浮かんでいる。

勝尾寺・多宝塔

★朱塗りながら清々しく、大変好感が持てる。高さは15メートル足らずのようだ。昭和6年の建立で、大変新しいが、色々と工夫がなされている。軒下には十二支の彫刻があり、窓は禅宗様の花頭窓となっている。

★勝尾寺には、色々な呼び名があるが、「かつおうじ」と呼ぶのが一般的である。奈良時代の開基で、各時代の権力者の帰依により比較的順調に推移してきたようだ。西国33観音霊場23番札所として、巡礼者の参詣は多い。

★最近は、春の桜、秋の紅葉を楽しむ観光地としての側面も強くなっており、すぐ下にある箕面公園、箕面の滝と併せ、観光客も増加しているようだ。いずれにしても、山中の佛都ともいえるこの寺と仏塔は、心を癒してくれるのだ。


◆日本三大不動のひとつ[滝谷不動・多宝塔](富田林市彼方1762)

★近鉄長野線滝谷不動駅から徒歩40分程度のところにある。総門から境内に入ると、比較的がらんとしていて、堂宇は散在している。

★滝谷不動の多宝塔は、左手から細い山道を登りつめた狭い場所に鎮座している。高さ15メートルほど、なかなか堂々としていて、バランスも良い。昭和59年に、弘法大師御入定1150年を記念して建立された新しいものだ。鉄筋コンクリート造りなのが、なんとも残念に思われる。

滝谷不動・多宝塔
多宝塔・軒下

★滝谷不動は、平安時代、弘法大師により開基されたが、その後幾多の興亡を繰り返し、現在地での再興は江戸時代になってからのようだ。この地は古来、文化と交易の中心地として栄え、歴史に彩られた場所だ。滝谷不動も、眼の病気にご利益があるということで、信者の参詣はあとを切らない。

★本尊・不動明王は重文になっており、成田不動、根来寺とともに、日本三大不動のひとつとなっている。仏塔がやや狭苦しいところに建立されていることは残念だが、駅から長時間歩いて来るだけのことはあった。

以上で一応大阪府を終わり、紹介できなかったものを一覧にしておきたい。

[大阪府の仏塔一覧](既に紹介したものを除く
<五重塔・三重塔・二重塔・多宝塔>


   寺   名       所   在   地   
1.金剛寺・三重塔      大阪市鶴見区緑3−4−22
2.円妙寺・三重塔      大阪市中央区中寺2−4−13

3.家原寺・三重塔     

堺市家原寺町1−8−20
4.観心寺・三重塔      河内長野市寺元475
5.法楽寺・三重塔      大阪市東住吉区山坂1−18−30
6.藤井寺・三重塔      豊中市城山町2−2−23
7.岡松寺・二重塔      大阪市福島区福島4−8−20
8.久米田寺・多宝塔     岸和田市池尻町934
9.金剛寺・多宝塔      河内長野市天野町996
10.慈眼院・多宝塔      泉佐野市日根野626
11.法道寺・多宝塔     堺市鉢ヶ峯寺401
12.大威徳寺・多宝塔    岸和田市大沢町1178
13.藤田美術館・多宝塔   大阪市都島区綱島町10−32
14.岩湧寺・多宝塔     河内長野市加賀田3824
15.重願寺・多宝塔     東大阪市山手町12−3
16.大聖勝軍寺・多宝塔   八尾市太子堂3−3−16
17.長慶寺・多宝塔     泉南市信達市場815
18.勝鬘院・多宝塔     大阪市天王寺区夕陽丘町5−36

次回から兵庫県と和歌山県にはいります


連載第39回

[兵庫県編]

◆奈良・京都以外では最古の仏塔[一乗寺・三重塔(国宝)](加西市坂本町821)

★北条鉄道法華口駅から徒歩50分ばかりのところにあり、便利は悪い。ところが幸いなことに、同じくらいの年齢の男性と一緒になり、人生の悩み、特に親の病気と介護に二人とも悩んでいることに共感し、疲れも退屈することもなく、目的地に着くことができた。

★一乗寺は石段から始まる。比較的急な石段の両側に、諸堂が連なっている。突き当たりの本堂の左前、狭い場所に仏塔が屹立しているが、平安時代後期の建立で、国宝だ。全体的に安定した形態をしているが、これは各層の適正な逓減によるものであろう。古塔だけに、渋く重厚な雰囲気を持っている。高さは20メートル余りで、軒下の組物はやや複雑のようだ。

一乗寺・三重塔

★この寺は奈良時代の開基で、種々の経緯を経て、武家や皇室の帰依を得、播磨国の大寺となってきたもののようだ。西国33観音霊場26番札所として、多くの信者の参詣は後を絶たず、バスで乗りつける団体客もあって、大変活気がある。

★境内には、本堂等の建築物や仏像等も数多く、国宝または重文に指定されているものもある。ゆったりと古塔と境内の雰囲気を楽しみ、しっとりと歴史を偲ぶには、格好の場所だ。苦労してやって来たことに、満足を覚えたのである。


◆播磨の法隆寺といわれる[鶴林寺・三重塔(県指定重文)](加古川市加古川町北在家424)

★加古川駅から20分ばかりのところにある。大門から入ると、正面にある本堂の左手に鶴林寺の三重塔が屹立している。各層の屋根の逓減は適正で、大変安定感があり、美しい。室町時代の再建で、その後も何回か改修されているようだが、県指定重文になっている。内部の構造には特徴があるが、詳細は分からない。

鶴林寺・三重塔

★鶴林寺の開基は聖徳太子ゆかりのもので、その後各時代で盛衰を繰り返し、現在は「播磨の法隆寺」と言われるほど、庶民の篤い信仰に支えられている。新西国観音霊場にもなっていて、参詣者は常時多い。

★境内には、国宝の本堂をはじめとして、重文の建築物や仏像を多く保有し、まさに文化財の宝庫といえよう。住職も、わざわざ本堂を開扉してくれたり、説明してくれたり、本当に親切であった。ゆっくりと半日過ごしたい寺院だ。

なお、写真を紛失したので、寺のパンフレットの写しで替えさせて戴く。

以上で簡単ながら兵庫県を終わり、紹介できなかった多数のものを一覧にしたい。

[兵庫県の仏塔](紹介済みのものを除く
<五重塔・三重塔・二重塔・多宝塔>

   寺   社   名        所    在    地    
1.円満寺・五重塔  加古郡播磨町野添1905
2.善導会・五重塔 西宮市苦楽園五番町1−54
3.長楽寺・五重塔 美方郡村岡町川会
4.須磨寺・三重塔 神戸市須磨区須磨寺町4−6
5.杜若寺・三重塔 伊丹市東有岡5−127
6.本興寺・三重塔 尼崎市開明町3−13
7.鏑射寺・三重塔 神戸市北区道場町生野1078
8.旧橋本関雪邸・三重塔 宝塚市売布3−2
9.柏原八幡神社・三重塔
氷上郡柏原町柏原3625
10.千光寺・三重塔    洲本市先山
11.高源寺・三重塔 氷上郡青垣町檜倉514
12.太山寺・三重塔 神戸市西区伊川谷町前開224
13.斑鳩寺・三重塔  揖保郡太子町斑鳩709
14.名草神社・三重塔   養父郡八鹿町妙見1755
15.六条八幡神社・三重塔 神戸市北区山田町中宮ノ片57
16.石峯寺・三重塔  神戸市北区淡河町神影110
17.如意寺・三重塔 神戸市西区櫨谷町谷口259
18.綱敷天満宮・三重塔   神戸市須磨区天神町2−1−11
19.光明寺・二重塔   加東郡滝野町光明寺433
20.祥福寺・二重塔 神戸市兵庫区五宮町22−17
21.称名寺・二重塔   加古川市本町313
22.霊法会・多宝塔    神戸市東灘区本山町岡本高井山上
23.鷲林寺・多宝塔   西宮市鷲林寺4−8
24.神呪寺・多宝塔  西宮市甲山町25−1
25.本法寺・多宝塔  神戸市兵庫区会下山町3−163
26.弘誓寺・多宝塔  多紀郡丹南町宇土611
27.蓮華寺・多宝塔  三田市下槻瀬678
28.淡路蓮華寺・多宝塔 洲本市安乎町宮野原445
29.温泉寺・多宝塔  城崎郡城崎町湯島985
30.播磨蓮華寺・多宝塔 三木市口吉川町蓮華寺187
31.荘厳寺・多宝塔 多可郡黒田庄町黒田1589
32.奥山寺・多宝塔  加西市国正町15
33.酒見寺・多宝塔 加西市北条町北条1319
34.伽耶院・多宝塔   三木市志染町大谷410
35.長遠寺・多宝塔  尼崎市寺町10
36.朝光寺・多宝塔   河東郡社町畑609
37.東光寺・多宝塔   美嚢郡吉川町福吉261
38.徳光院・多宝塔     神戸市中央区葺合町布引山2−3

                          (和歌山県に続く)



連載第40回

[和歌山県編]

◆西国33観音霊場第1番[青岸渡寺・三重塔](東牟婁郡那智勝浦町那智山8)

★紀勢本線那智駅から、那智山行きバスに乗車、30分程度で青岸渡寺に着く。急な石段を登って行くと、二股に分かれ、真っ直ぐ行くと熊野那智大社に入る。ここで右に折れて更に登り、豪壮な仁王門から境内に入ると、すぐ素晴らしい歴史を感じる本堂に達する。

★境内は全体が丘陵地になっていて、堂宇は上下に散在している。本堂近くから下を見渡すと、正面に落差133メートルの那智の滝があり、左手のやや下に朱色の三重塔が望める。本当に雄大で、滅多にない絶景だ。

青岸渡寺・三重塔

★三重塔は、もともと平安時代に建立されたが、現在のものは昭和47年に再建された本当に新しいものだ。高さは25メートルで、形は均整が取れており、組物にも工夫があるようだが、鉄筋コンクリート造りであることが、何といっても残念だ。信仰よりも観光のためのもの、と言われても仕方がない。

★青岸渡寺は、仁徳天皇の頃、印度から裸形上人が漂着し、この地に庵を結んだのが始まりと言われる。以降、推古天皇によって堂塔が建てられ、更に如意輪観音が安置され、やがて神仏習合の修験道場となったものという。そして、本宮、新宮、那智を「熊野三山」と称して、全国から熊野詣でが盛んになったようだ。

★更に、平安時代の花山法皇は、この山に留まって、ここを西国33観音霊場第1番に決めたという。以降、札所巡りの参詣者は全国から引きもきらず、現在も打ち始めの札所として大変な賑わいだ。装束、掛け軸、朱印帖等あらゆるものが揃っており、私も、最初の一回目は朱印帖で、二回目は掛け軸で巡ったのであった。

納経帳

★本堂は、室町時代末期、秀吉の建立で、極めて豪壮であり、国指定重文となっている。明治の神仏分離で、殆どの堂宇は棄却され、当時のもので残っているのはこの本堂だけなのは一寸寂しい。

★隣りには、熊野那智大社があり、熊野本宮大社、熊野速玉大社と併せて巡るのは楽しい。ただ、バスの乗り継ぎになり、便利が悪いのは覚悟しておきたい。いずれにしても、本堂から見る那智の滝と三重塔の取り合わせは本当に素晴らしく、美しい景観に酔ってしまうくらいだ。何回でも行ってみたいところのひとつといえよう。


◆桜の名所[紀三井寺・多宝塔(国指定重文)](和歌山市紀三井寺1201)

★紀勢本線紀三井寺駅から10分ばかり、朱塗りの山門に着く。この付近は、常時参詣客や観光客でごった返しており、先ず魂消てしまう。山門を入り、200段余りの、急な石段を登ることになる。何回か休みながら登る。やがて、右側に小さな滝が現れる。この滝と、ほかにある二つの滝をあわせて、寺の称号になったものという。

★石段を登りつめると、幾つかの堂宇が散在し、一番奥に本堂がある。なかなか豪壮なもので、県指定重文となっている。

★紀三井寺の多宝塔は、本堂の右側の一番高い場所に鎮座している。大変バランスが良く、堂々たるものだ。室町時代の建立で、国指定重文となっている。高さは15メートルほど。寺は、奈良時代唐僧によって開基され、その後平安時代には、花山法皇が西国33観音霊場に指定し、2番札所になっている。

納経帳

★境内には1000本以上の桜の木があって、花見の頃は本当に素晴らしい。私も一度この季節に当たり、深い感動を覚えた。芭蕉の、桜を詠んだ句碑もある。

★多宝塔の付近からは、和歌の浦の光景を一望することができる。山部赤人の「和歌の浦 潮満ちくれば潟を無み 葦辺をさして田鶴鳴き渡る」という万葉集の歌を思い出して、熱い感動に耽ることができる。急な石段を苦労して登ってきたことなど、すっかり忘れさせてくれる景観だ。写真を沢山撮影したが、すべて行方不明となり、やむを得ず納経帖の写しを添付した。

以上で一応和歌山県を終わり、大票田の奈良県に入りたいが、紹介できなかったものを一覧にしておきたい。


[和歌山県の仏塔](既に取り上げたものを除く
    <五重塔・三重塔・多宝塔・宝塔>

      寺    名        所   在   地

1.白浜金閣寺・五重塔    西牟婁郡白浜町太刀ヶ谷

2.道成寺・三重塔      日高郡川辺町鐘巻1738

3.金剛三昧院・多宝塔    伊都郡高野町高野山425

4.浄妙寺・多宝塔      有田市宮崎町小豆島1000

5.長保寺・多宝塔      海草郡下津町上690

6.根来寺・多宝塔(大塔)  那賀郡岩出町根来2286

7.慈尊院・多宝塔      伊都郡九度山町慈尊院823

8.海禅院・多宝塔      和歌山市和歌浦中3−4−28

9.金剛峯寺・多宝塔(西塔) 伊都郡高野町高野山132

10.同上   (金輪塔)  同上

11.同上   (大塔)   同上

12.同上   (東塔)   同上

13.高山寺・多宝塔     田辺市稲成町392

14.光台院・多宝塔     伊都郡高野町高野山649

15.白浜金閣寺・多宝塔   西牟婁郡白浜町太刀ヶ谷

16.南院・宝塔       伊都郡高野町高野山680

(次回は奈良県編に入りす。)

♪BGM:Chopin[Nocturne2]arranged by Pian♪

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