いなほ随想
師走の忘年登山の記
~富士山に見守られ・珍草シモバシラと遊んだ山行の画像報告~

山本浩(29政経)
文・写真

12月の山行と珍草シモバシラとの出合い
★今年(2012年)の暮れは早々と寒気がやってきて寒い。然し晴れると空の透明度は素晴らしい。12月は私の属する山の会「べるくらぶ」の忘年山行と昔よくお世話になったJASS(日本セカンドライフ協会)の山行に参加して幾つかの特徴的な出会いがあったので書き留めておきたい。

山の会「べるくらぶ」の忘年山行
伊豆・葛城山~達磨山

★山の会「べるくらぶ」の忘年山行には総会と忘年会を伴うので山は比較的易しい山、方角は温暖な方面が多い。今年も12月4日~5日で伊豆の葛城山452mと達磨山982mに登ることになった。

★葛城山は修善寺の北側にありロープウェイもある家族向きの山だが、我等は大門橋の側から小坂みかん園を通って登り始める。完熟のみかんがいくつも地べたに落ちているので一寸ひとつ失敬して頂上で食べたが中々の美味だった。

小坂みかん園 葛城山ロープウェイ

★頂上からは駿河湾が一望にでき、手前の内浦湾に浮かぶ淡島から御用邸の森、沼津市へと続く海岸線の湾曲が素晴らしい。北側正面には富士山の秀麗な姿がある筈だが今は雲に隠れて手前の山々の紅葉の先に長岡温泉郷が見られるのみなのがちょっと残念だ。

葛城神社 淡島

★頂上の葛城神社は役小角の開基と伝えられるから此の山は修験の山ということになる。昼食をとってのんびりしていたら富士山!の声が上がった。雲間を破って5合目から上位が姿を見せ始めた。正面右手には宝永火口の大きな抉れがあるものの西の富士宮側、東の御殿場側へ裾を広げる純白の姿はやはり日本一だ。そのうち手前の鷲頭山から富士山まで見通せるようになったのだから有難いことこの上ない。

葛城山から初めて見えた富士山 鷲頭山越しの富士山(左奥沼津)

★下りは三津長浜方向の発端丈山への道を右に分け、更に城山への道を左に分けて狩野川べりの大仁(おおひと)へ下りたのだが、雨の後の滑りやすい悪路に悩まされて思わぬ時間を食ってしまう、やはり修験の山はやわじゃない。

★その夜は土肥温泉で忘年会、明けて5日は快晴に恵まれ、西伊豆スカイラインの船原峠の先、土肥駐車場から伊豆山稜線歩道を歩き始める。笹原に囲まれた道を行くと進む方向に富士山が様々の雲との共演を見せ続けてくれる。

★伽藍山867m、古稀山920mを過ぎて達磨山982mに至ると、この縦走路の最高所だけに昨日の葛城山とは一味違った眺望が楽しめた。色んな山へ出かけて富士山の姿を目にするとそれだけで不思議に満たされた気分になるものだが、これだけ富士を見続けながら歩けることはそうざらにあるものではない。

古稀山からの富士山 熊笹越しに駿河湾を隔てて富士山
西伊豆スカイライン越しの富士山
クジラのような笠雲の富士 笠雲と駿河湾
駿河湾越しにお重の笠雲 沼津港からの富士山

★今年一年あまり良いことには恵まれない年だったが、来年は希望が持てそうな気がしてきた。山を下りて沼津港に立ち寄り旬の金目ダイの味を楽しんだが、日暮れ近い港からも富士山は見守っていてくれた。



JASSの年の瀬山行
東丹沢・高取山~仏果山

★今年(2012年)最後の山行にしようと12月10日に東丹沢の高取山、仏果山へ出かけた。小田急の本厚木から半原行きのバスで約50分、中津川にかかる愛川大橋で下りて古い石小屋ダムの傍を通り宮が瀬ダムのダムサイトへ向かう。この辺りはホタルの里で3月下旬にはカタクリの花でも知られている。

古い石小屋ダム

★宮が瀬ダムは4.6平方km、貯水量約2億トンで箱根の芦ノ湖とほぼ同じ水量を蓄えているとは驚きだ。聳え立つ堰堤の下から40人乗りのエレベーターで一気に121mを上ると堰堤の上に着くが、満々と水を湛える湖面から吹き渡ってくる強風の冷たいこと、吹き飛ばされぬよう帽子を押さえながら375mの堰堤を渡り切ったところが高取山の登山口だった。

宮が瀬ダム堰堤 宮が瀬ダム俯瞰
宮が瀬湖 高取山~仏果山登山口

★各自ストレッチや靴ひもの締め直しなど準備を整えて出発する。予めリーダーから始めの狭い急階段の一気登りのキツサ加減は聞いていたが、この30分はやはり相当のもので、登り切った展望所から見下ろす宮が瀬ダムの景色に疲れを癒された。

★ここから更に高度を上げながら高取山の北斜面を行くが、やがて道の北側に綿のように散らばる白いものを見た。これは間違いなく植物のシモバシラ(シソ科シモバシラ属)だ。霜柱ではなく、しそ科の多年草で上部の葉や穂が枯れ落ちた後、茎が地中の水分を吸い上げて氷のオブジェを造形する、この現象は降雪の前に見られるのでユキヨセソウとも云う。

シモバシラ発見 シモバシラの群落
2巻きが合体 大型縦巻き
大型横巻き 巻き重ね

★高尾山から城山に向かう北斜面でも見ることが出来るが、時期は12月中旬から1月初旬、根も枯れてしまって水を吸い上げられなくなったり、雪が積もったりすると見ることはできない。今年は月初めに来た寒気の影響で例年より早そう、それにしてもこんな大群落をこの後も何か所か見たのは初めてだった。

★高取山から仏果山の山域は鹿が多く、何か所かで鹿柵をくぐるが、更に悪いほうで有名なのは山ヒルで「春~秋、山ヒルに注意」の標識を幾つも見た。

★高取山に至る登山道は痩せ尾根の部分がかなり多く、特に強風が吹きぬける時は加齢とともにバランスの悪化を実感している私にとって両サイド崖は苦手中の苦手だ。高取山山頂705mは僅かの休憩だけで仏果山747mへ急ぐ、この両山を繋ぐ稜線は比較的整備されていて歩き易い。

高取山~仏果山稜線にて 高取山より厚木横浜方面

★仏果山頂上からの横浜・東京方面の眺めでランドマークタワーやスカイツリーまで確認できたのだから、やはり山はお天気が一番の感を強くした。14時半に愛川の野外センターバス停に下り、これで私の今年の山は終わった。

★12月の山は決して高い山ではなかったが、山高きが故に貴からず、低きが故に軽んずべからずで、キツイ登りも厳しい道も変わりなくあるし、また山の魅力も思いもかけない品揃えで私を迎えてくれた。年が明ければ今度は雪山が私を招いて呉れることだろう。


♪BGM:Ripple[明日晴れるかな]arranged by Ripple♪
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