いなほ随想
特   集

西国三十三観音巡礼記

滝沢公夫(30法)
文・写真



[第25番札所 清水寺]

清水寺根本中堂
同寺ホームページから転借

難所にある 第二十五番[清水寺]
(山号)御嶽山 (宗派)天台宗 (本尊)十一面観音
(所在地)兵庫県加東郡社町平木1194
(巡礼歌)あはれみや普き門の品々に なにをか波のここに清水


★清水寺は、福知山線の相野駅からバスで行きますが、本数が極めて少なく、駅で長時間待つ羽目となりました。やっと来たバスには私の外に乗客がなく、50分くらいの間貸切状態で、運転手と世間話や地元の話が弾み、大変楽しくまた勉強になりました。

★バスは曲がりくねった山道を、どんどん高度を上げていきます。丹波、摂津、播磨の国の境にあり、難所のひとつです。やがて、比較的新しく大規模な山門の前に着きました。山門を入りますと根本中堂があり、ここからの眺望は雄大で美しく、播磨灘や島々も見渡せます。

仁王門 大講堂
同寺ホームページから転借

★この寺は、帰化僧・法道仙人が、欽明天皇の頃堂宇を建立し、更に推古天皇の三十五年(725)、金堂の建立とともに十一面観音を安置したといわれます。また、神亀二年(725)には、行基菩薩が大講堂を建立し、千手観音を安置したとのことです。

薬師堂 地蔵堂
同寺ホームページから転借 同寺ホームページから転借

★ここは、京都、播磨の清水寺と合わせて、日本三清水寺のひとつであり、いずれも坂上田村麻呂ゆかりの寺です。現在の建物は、いずれも大正時代の再建ですが、かつては多くの堂塔が寺域に散在していたそうです。

滾浄水(こんじょうすい)別名:おかげの井戸
同寺ホームページから転借

★誰ひとりいない山上で、次のバスが来るまで、長時間眺め回し、また瞑想に耽ったのでした。





[第26番札所 一乗寺]

一乗寺本堂(金堂、大悲閣)
wikipediaから転借

国宝・三重塔のある 第二十六番[一乗寺]
(山号)法華山 (宗派)天台宗山門派 (本尊)聖観音
(所在地)兵庫県河西市坂本町872-17
(巡礼歌)春は花夏は橘秋は菊 いつも妙なる法の華山

★一乗寺は、加古川線の粟生で北条鉄道に乗り換え、法華山口駅で下車、徒歩一時間ほどのところにあります。殺風景な道中、夫婦連れの巡礼者と一緒になり、色々人生問題や親の介護問題等を話しながら歩きましたので、長い距離も余り苦になりませんでした。

一乗寺の山門代わりの石柱

★山を登りつめて、やや下がりますと石段があり、この上に舞台造りの本堂が現れます。感動の一瞬です。すぐ下には、平安時代建立の、国宝・三重塔も眺められます。この塔は、大和・山城以外では最古のもので、逓減率が大きくて形が良いです。素晴らしい、の一言です。

国宝の三重塔 三重塔

★この寺は、大化元年(645)頃、帰化人・法道仙人が、孝徳天皇の病気平癒を祈って快癒したため、この地に金堂を建立し、一乗寺の額を授けられて、聖観音を安置したのが始まりといわれています。その後、行基菩薩や弘法大師もこの地を訪れ、更に後醍醐天皇によって大伽藍となりましたが、兵火による焼失と再建を繰り返し、現在の本堂は寛永五年(1628)の再建といわれます。

法道仙人を祭る開山堂
wikipediaから転借

★しかし、平安時代の三重塔、鎌倉時代の妙見堂、護摩堂、弁天堂等は貴重です。寺域はあまり広くなく、また眺望も良くありませんが、長い歴史は十分感じられ、苦労してやってきた甲斐はありました。巡礼者との暖かい交流も、胸の痛くなるような感動的な思い出です。





[第27番札所 圓教寺]

圓教寺仁王門

山上の大伽藍 第二十七番[教寺]
(山号)書写山 (宗派)天台宗山門派 (本尊)如意輪観音
(所在地)兵庫県姫路市書写2968
(巡礼歌)はるばるとのぼれば書写の山おろし 松のひびきも御法なるらん

★姫路駅からバスで四十分、更にロープウエーに乗り五分で山上に着きます。ここからの眺望は雄大なものです。更に徒歩で三十分、幽邃な雰囲気の中を進みますと、宿院等が両側に現れ、正面には巨大な舞台造りの摩尼殿がのしかかってきます。この山上に、これだけの巨大な建築物があることに驚嘆させられました。

石段上は摩尼殿

★圓教寺は、天禄元年(970)性空上人が創建し、自刻の如意輪観音を本尊としました。性空上人は、吉田兼好や和泉式部がとりあげていますが、極めて人望の厚い人だったようです。

大講堂

★摩尼殿から更に奥に進みますと、重文の大講堂、食堂、常行堂があり、ほかにも広大な寺域には、鐘楼、金剛堂、寿量院、護法堂等三十以上の建物が散在しています。宿坊やみやげ物店もあり、山上の小都市の観もしてきます。折角苦労して登ってきしたので、ゆっくりとすべてを見て回り、長い歴史と独特の雰囲気を味わうことができました。





[第28番札所 成相寺]

成相寺本堂
wikipediaから転借

天橋立に近い 第二十八番[成相寺]
(山号)成相寺 (宗派)高野山真言宗 (本尊)聖観音
(所在地)京都府宮津市成相寺339
(巡礼歌)波の音松のひびきも成相の 風ふきわたす天の橋立

★天橋立駅に降り立ちますと、すぐそばに、日本三大文殊のひとつである智恩寺があります。ここの多宝塔は室町時代建立の重文で、境内はかなり人出が多かったです。目の前には天橋立がつながって見られます。

多宝塔の前から天橋立を望む

★観光船乗り場から乗船して府中に着きます。ここから更にケーブルカーに乗って傘松へ。更に登山バスに乗って二十分、やっと寺にたどり着きました。石段を登り、壮大な山門を潜り、更に石段を登りますと、中規模の本堂が目の前です。不便な割には観光地が近いため、大変な人出でした。

本堂に掲顎されている左甚五郎作「真向の竜」

★成相寺は、慶雲元年(704)、真応上人が、この地の美しい風光に感動して開基したものといわれます。その後、兵火や落雷で堂宇を焼失し、江戸時代の慶長年間に再興されましたが、見るべき堂宇はなく、現在のような小規模な寺になったようです。しかし、寺域の整備に努力中であり、平成十一年には五重塔が再建されました。これから次第に風格が出てくるものと期待されます。それにしても、人を引き付ける魅力のある寺のようです。帰途傘松では、股から天橋立を覗き見て、感動的なひとときを持ちました。



[第29番札所 松尾寺]

松尾寺公式ホームページのタイトル画像から転借


馬頭観音が本尊 第二十九番[松尾寺]

(山号)青葉山 (宗派)真言宗醍醐派  (本尊)馬頭観音
(所在地)京都府舞鶴市松尾532
(巡礼歌)往昔は幾世経ぬらん便りをば 千歳もここに松の尾の寺


★松尾寺は比較的不便なところにあり、前日に舞鶴に宿泊し、早朝に松尾寺駅に降り立ちました。駅からのどかな田園風景の中を一時間ほど歩きますと、小さな山門に着きます。あたりは遠く山に囲まれています。

★山門を入りますと、鐘楼、本坊、経蔵、大師像、位牌堂等があり、正面に本堂があります。二層の唐破風造りです。本堂の前にはブロンズの馬の像があります。馬頭観音を本尊とする札所はここだけです。この寺は、慶雲元年(704)、唐の僧・威光上人が、この地で馬の耳に似た山を発見し、これは霊峰だと思って、中腹の松の木の下で祈り始めたところ、馬頭観音が現れたので、ここに安置したのが始まりといわれます。

金剛力士像 朱印帳
同寺ホームページから転借

★鳥羽天皇の頃には六十五の末寺を有しましたが、その後の兵火で焼失し、細川氏が天正九年(1582)に再建、慶長七年(1602)と享保十五年(1730)に修理されたのが現在の本堂だといわれています。正面には青葉山が迫って見えます。人ひとりいない閑寂な境内で、しばらく疲れを癒していたのでした。(続く)

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